今年の春ごろ、国民的タレントのマツコ・デラックスさんが、首の痛みや手足のしびれなどの症状により入院・手術を受け、しばらくお仕事を休まれたというニュースがありました。
私の家族やスタッフも大好きなタレントさんなので、当院でも話題になりました。現在は無事にお仕事へ復帰され、安心された方も多いと思います。正式な病名は公表されていませんが、一部では「頚椎症性脊髄症ではないか」と報道されていました。当院にも、首や肩の痛み、腕や手のしびれを訴えて来院される方が多くいらっしゃいます。特に50代以降になると、長年の姿勢や身体の使い方に加え、加齢による変化も重なり、首の症状が現れやすくなります。
頚椎症とは、首の骨や椎間板、関節、靱帯などが、年齢や長年の負担によって少しずつ変化していく状態です。簡単にいえば、首の関節やクッション部分に起こる老化や変形です。この変化によって、首の中を通る脊髄が圧迫されるものを「頚椎症性脊髄症」、腕や手につながる神経が圧迫されるものを「頚椎症性神経根症」といいます。
「頚椎症性脊髄症」では、手足のしびれ、力の入りにくさ、歩きにくさなどが現れます。箸を使う、ボタンを留める、文字を書くといった細かな動作が難しくなることもあります。一方、「頚椎症性神経根症」では、首から肩、腕、手にかけて痛みやしびれが出ることが多く、首を後ろへ反らしたり、症状のある方向へ向けたりすると悪化する場合があります。
脊髄や神経が強く圧迫され日常生活に支障が出ている場合は、もうカイロプラクティック施術だけで改善させることはできず、症状によっては圧迫を取り除くための外科手術が必要になることがあります。手足のしびれが強くなる、手先が急に不器用になる、歩きにくい、足がもつれる、力が入りにくいといった症状がある場合には自己判断をせず、早めに整形外科や専門の医療機関を受診してください。頚椎症は、最初のうちは「いつもの首こりや肩こり」「少し腕がしびれるだけ」と見過ごされがちですが、症状が進行してしまうと治療期間が長くなり、治療の選択肢も限られてしまいます。だからこそ、症状が軽いうち、あるいは症状が出る前から首に負担をかけにくい身体の状態を保つことが大切なのです。
残念ながら、カイロプラクティックによって、加齢に伴う骨や椎間板の変化を完全に防ぐことはできません。しかし、身体のバランスや姿勢を定期的に確認することで、首に負担をかけている原因に早めに気づくことはできます。例えば、頭が前に出ている、左右の肩の高さが違う、背中が丸くなっている、身体の重心が片側に偏っているといった姿勢の変化は、自分ではなかなか気づきにくいものです。こうした状態が長く続くと、首や肩の筋肉が常に緊張し、頚椎の一部に負担が集中しやすくなります。特に、デスクワークやスマートフォンを長時間使用する方は注意が必要です。
また、首への負担は、首だけに原因があるとは限りません。骨盤や背中のバランスが崩れることで、その上にある頭を支えるために、首が無理をしていることもあります。そのため当院では、首だけを見るのではなく、頭、背骨、骨盤を含めた身体全体のバランスを確認しています。定期的に身体の状態を確認することで、首の動きの硬さや筋肉の緊張、姿勢や重心の変化などにも早めに気づくことができます。
カイロプラクティックは、頚椎症性脊髄症を直接治療したり、その発症を確実に防いだりするものではありません。しかし、姿勢や身体のバランスを整え、首にかかる余分な負担を減らすための予防的な健康管理として役立てることができます。歯に痛みがなくても定期検診を受けるように、首や背骨も、問題が大きくなる前から定期的に状態を確認し、整えていくことが大切です。首の健康は、強い痛みやしびれが出てからではなく、元気に動けるうちから守っていきましょう。
矢島 敬朗 上部頸椎カイロプラクター


