昨年末、15年の長きにわたるプロジェクトがようやく完遂した。私がまだライフ大学の学生だった2009年の春、ラスベガスで行われたUpper Cervical Revolutionというセミナーに参加したことが全ての始まりだった。
上部頚椎カイロプラクティック界のバイブル的存在として有名な“What TIME Tuesday?”という本がある。地獄の痛みと言われている三叉神経痛の治療体験記だ。著者であるジェームズ・トマシ氏の発症から壮絶な闘病生活、そして上部頚椎テクニックとの出会いから治療〜完治、その後の活動を記した一冊である。彼は自らの体験を、現在体の様々な痛みや症状に悩まされている人々のために役立てなければいけないという強い信念のもと、妻のロンダとともに上部頚椎テクニックを広める活動をしている。その一環として、“What TIME Tuesday?”を皮切りに、いくつもの書籍の執筆を手掛け、上部頚椎テクニックの啓蒙活動に勤しんでいる。
私がトマス氏に初めて出会ったのは、前述の2009年春、ラスベガスのセミナーだった。各地から参加者が集まり各種講演会、ワークショップ、カイロプラクティック治療関連の器具や書籍の販売が行われていた。トマス氏の書籍販売サイン会も行われていた。上部頚椎を勉強する学生だった私は当然、彼のサイン会の列にウキウキしながら並ぶ。いよいよ私の順番がきた。軽く挨拶をするとトマス氏から突然「君は学生さん?」と聞かれた。私が「そうだ」と答えると「定価$5だけど$3でいいよ。でも、もし本当にお金が厳しいようなら$1でもかまわないよ。」と言われた。私は、そんなにみすぼらしい貧乏学生に見えるのかと少し落ち込んでいたら、トマス氏は優しく「私はこの本を多くの人に読んで欲しいから言ったんだ。別に君がお金が無い人に見えていたわけではないよ。」とまるで私の落ち込んだ気持ちを見透かすように言った。これが、私とジェームズさんの出会いだった。サイン会の後、幸運にもジェームズさんと話す機会ができた。そこで私が日本人だと話すと、彼はおもむろに「この本を日本語に翻訳してくれないか?日本の人たちにもぜひ読んでほしい。上部頚椎テクニックで救われることを知ってほしいんだ!」と言ってきた。聞けば、彼は高校時代、日本に留学していたらしい。しかし、私は英語が苦手で翻訳なんてとんでもないと思い断ったのだが、「何年かかってもいい。これから上部頚椎カイロプラクターになる君に翻訳してほしいんだ。」と熱っぽく語られ、勢いに負けて引き受けることになった。
このラスベガスでの出来事から数ヶ月後、私は無事大学を卒業し、国家試験をパスしカイロプラクターになった。現在の当院の前身である〈和泉カイロプラクティック〉を引き継ぎ、いきなり個人事業主となり独り立ちすることになってしまった。悩殺される日々の中で、正直このまま無かったことに…翻訳なんてやめてしまおうかと思うことも一度や二度ではなかったが、ジェームスさんの「何年かかってもいい。」の言葉を思い出し、遅々ではあるが進めていた。けっきょく、私の英語力では到底終わらないことに気づき、プロにお願いし翻訳してもらったのだが、医療用語やカイロプラクティック用語などの専門用語は私が担うため、これまた時間がかり、さらに追加部分や参考図の加筆修正などもあり、ようやく完成にこぎつけた時には15年が経っていた。それでも、今は達成感と爽快感しかない。やっとあの日の約束を果たすことができたのだ。
この度、出版記念として、この“What TIME Tuesday?”日本語版を300部限定で無料配布しています。当院に来院履歴がない方にもお配りしていますので、ご興味がある方はぜひ当院にお立ち寄りください。
上部頚椎カイロプラクティックは、背骨の歪みを正常な状態に戻し神経の流れを良くすることで、人間の持っている自己回復力を最大限に引き出す究極の自然療法です。辛い痛みや症状でお悩みの方は、トマス夫妻の熱い想いと上部頚椎テクニックの可能性に賭けてみませんか。まずは、“What TIME Tuesday?”をお手に取ってみてください。
矢島 敬朗 カイロプラクター